副業を申告しないとどうなる
——無申告加算税・延滞税と税務署にバレる経路【2026年版】
無申告加算税とは、法定申告期限までに確定申告をしなかった場合に本来の税額へ上乗せして課される附帯税で、税務調査を受けてからの期限後申告では納付税額のうち50万円までの部分に15%、50万円を超え300万円以下の部分に20%、300万円を超える部分に30%の税率が適用されます(国税庁タックスアンサーNo.2024)。ただし「では実際にいくら上乗せされるのか」を試算してみると、多くの副業会社員が想像する金額とはかなり違う結果になります。この記事では税率の仕組みを整理したうえで、当サイトのシミュレーターと同じ計算式で本業年収別に上乗せ額を計算した結果と、延滞税の割合をめぐる読み違いやすい点を、国税庁の公表資料と国税通則法の条文に基づいて解説します。
- 税務調査の事前通知前に自主的に期限後申告をすれば無申告加算税は一律5%だが、調査を受けてからでは50万円までの部分に15%、300万円超の部分に30%の税率がかかる(国税庁タックスアンサーNo.2024)
- 延滞税の高い割合(令和8年は年9.1%)が適用されるのは「納期限の翌日から2か月経過後」で、期限後申告の納期限は「申告書を提出した日」。申告と同時に納付すれば全期間が低い割合(年2.8%)になる(国税庁タックスアンサーNo.9205)
- 加算税は確定額が5,000円未満なら全額切捨て、延滞税は1,000円未満なら全額切捨て(国税通則法119条4項)。当サイトの試算では、本業500万円・副業所得50万円の人が1年後に自主申告した場合の上乗せは1,100円、同じ条件で調査を受けてからだと7,100円だった
- 法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、税額の全額を法定納期限(3月15日)までに納付していれば、過去5年間に無申告加算税等を課されたことがない限り無申告加算税は課されない(国税庁タックスアンサーNo.2024)
- 上乗せは「加算税」と「延滞税」の二重構造
- あなたはいまどの段階?——タイミングで税率が3段階に変わる
- 延滞税は「2か月で9.1%」ではない——納期限の読み方
- 当サイト試算:1年放置すると実際いくら上乗せされるのか
- 無申告加算税がまったく課されない条件
- 副業の無申告はどこから税務署に伝わるのか
- よくある誤解の訂正
- 隠す・偽ると重加算税40%になる
上乗せは「加算税」と「延滞税」の二重構造
副業の所得を確定申告しないまま放置すると、本来納めるべき税額に「無申告加算税」と「延滞税」の2つが上乗せされます。無申告加算税は「申告をしなかったこと」自体に対する制裁的な性格の附帯税で、延滞税は「納付が遅れたこと」に対する利息に近い性格の附帯税です。両方とも本税とは別に計算され、原則として両方が同時にかかります。
あなたはいまどの段階?——タイミングで税率が3段階に変わる
無申告加算税の税率は「いつ、どういう経緯で期限後申告に至ったか」で決まります。まず自分がどの段階にいるかを確認してください。
| いまの状況 | あなたに適用される区分 | すぐ取るべき行動 |
|---|---|---|
| 申告期限(3月15日)からまだ1か月経っていない | 要件を満たせば無申告加算税なし | すぐ申告。税額は法定納期限(3月15日)までに納付していることが要件のため、納付も直ちに行い、あわせて口座振替の取扱いを税務署に確認する |
| 期限は過ぎたが、税務署から何の連絡も来ていない | 自主的な期限後申告=5% | 連絡が来る前に自分から申告する。この段階が最も税率が低い |
| 税務署から調査の事前通知が届いた | 10%/15%/25%(金額区分別) | 調査を受ける前に期限後申告をすれば、調査後より税率が下がる |
| すでに税務調査を受けた/決定処分を受けた | 15%/20%/30%(金額区分別) | 最も重い区分。指摘に沿って速やかに申告・納付する |
金額区分別の税率は次のとおりです(令和6年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税=令和5年分の所得税から適用。国税庁タックスアンサーNo.2024)。
| 申告のタイミング | 納付税額50万円までの部分 | 50万円超300万円以下の部分 | 300万円を超える部分 |
|---|---|---|---|
| 税務調査の事前通知が来る前に自主的に期限後申告 | 一律 5% | ||
| 事前通知後・調査を受ける前に期限後申告 | 10% | 15% | 25% |
| 税務調査を受けて期限後申告・決定処分 | 15% | 20% | 30% |
延滞税は「2か月で9.1%」ではない——納期限の読み方
延滞税は法定納期限の翌日から実際に納付する日まで、日数に応じて自動的に計算されます。割合は次の2段階です。
| 期間 | 納期限までの期間+納期限の翌日から2か月を経過する日まで | 納期限の翌日から2か月を経過した日以後 |
|---|---|---|
| 令和8年(2026年)1月1日〜12月31日 | 年2.8% | 年9.1% |
| 令和4年〜令和7年(2022〜2025年) | 年2.4% | 年8.7% |
ここで読み違えやすいのが「納期限」の意味です。国税庁タックスアンサーNo.9205の注記では、納期限は期限内に申告された場合は法定納期限、期限後申告または修正申告の場合は「申告書を提出した日」、更正・決定の場合は通知書を発した日から1か月後の日、と定められています。
当サイト試算:1年放置すると実際いくら上乗せされるのか
ここからは当サイトのシミュレーターと同じ計算式(国税庁の速算表・令和8年分の基礎控除・給与所得控除)で、副業を無申告のまま1年放置した場合の上乗せ額を計算します。会社員は本業の給与から所得税が源泉徴収され年末調整も済んでいるため、期限後申告で新たに納付すべき税額=副業所得によって増える所得税(+復興特別所得税)になります。これが加算税・延滞税の計算の基礎です。
本業年収 × 副業所得別:自主申告と調査後でここまで差がつく
2026年分の副業所得を申告せず、1年後の2028年3月15日に期限後申告して同日に納付したと仮定した試算です。
| 本業の年収 | 副業の所得 | 本税(増える所得税) | 自主的に申告した場合の上乗せ | 調査を受けてからの上乗せ | 差額 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400万円 | 30万円 | 15,400円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 400万円 | 50万円 | 25,600円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 400万円 | 100万円 | 60,800円 | 1,600円 | 10,600円 | 9,000円 |
| 500万円 | 30万円 | 22,700円 | 0円 | 0円 | 0円 |
| 500万円 | 50万円 | 43,100円 | 1,100円 | 7,100円 | 6,000円 |
| 500万円 | 100万円 | 94,200円 | 2,500円 | 16,000円 | 13,500円 |
| 700万円 | 30万円 | 61,300円 | 1,600円 | 10,600円 | 9,000円 |
| 700万円 | 50万円 | 102,100円 | 7,800円 | 17,800円 | 10,000円 |
| 700万円 | 100万円 | 204,200円 | 15,600円 | 35,600円 | 20,000円 |
試算の条件:本業は給与のみ、副業は雑所得で経費0円、社会保険料は本業年収×14.5%、その他の所得控除なしの単身会社員。2026年(令和8年)分。上乗せ額は無申告加算税+延滞税で、本税・住民税は含みません。加算税・延滞税は国税通則法118条3項・119条4項の端数処理を反映しています。
気づくのが早いほど安い:本業500万円・副業所得50万円のケース
本税43,100円(上の表の中央のケース)で、気づいたタイミングと納付の仕方だけを変えて計算しました。
| いつ・どうしたか | 無申告加算税 | 延滞税 | 上乗せ合計 |
|---|---|---|---|
| 4月15日までに自主申告し、税額は3月15日までに納付済み | 0円(免除規定) | 0円 | 0円 |
| 4月15日に自主申告し、同日に納付 | 0円(5%だが5,000円未満で切捨て) | 0円(1,000円未満で切捨て) | 0円 |
| 6か月後(9月15日)に自主申告し、同日に納付 | 0円(同上) | 0円(同上) | 0円 |
| 1年後(2028年3月15日)に自主申告し、同日に納付 | 0円(同上) | 1,100円 | 1,100円 |
| 1年後に税務調査を受けて期限後申告し、同日に納付 | 6,000円(15%) | 1,100円 | 7,100円 |
| 1年後に申告したが、さらに1年納付しなかった | 6,000円(15%) | 4,300円 | 10,300円 |
条件は前表と同じ。延滞税は令和8年の割合が継続すると仮定し、法定納期限(2027年3月15日)の翌日から納付日までの日数で計算。最終行のみ、申告日から2か月経過後の期間に年9.1%を適用しています。
少額なら加算税・延滞税が「0円」になることがある(端数処理)
上の表で0円が並ぶのは、附帯税に法律上の端数処理があるためです。国税通則法の条文で確認できます。
- 計算の基礎となる本税は1万円未満切捨て——「附帯税の額を計算する場合において、その計算の基礎となる税額に一万円未満の端数があるとき、又はその税額の全額が一万円未満であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる」(国税通則法118条3項)。本税が1万円未満なら加算税も延滞税も生じません
- 加算税は5,000円未満なら全額切捨て——「附帯税の確定金額に百円未満の端数があるとき、又はその全額が千円未満(加算税に係るものについては、五千円未満)であるときは、その端数金額又はその全額を切り捨てる」(国税通則法119条4項)。調査を受けた場合の15%なら本税39,999円以下、自主申告の5%なら本税99,999円以下で無申告加算税は0円になります
- 延滞税は1,000円未満なら全額切捨て——同じ119条4項によります
無申告加算税がまったく課されない条件
次の条件をすべて満たす場合は、期限後申告であっても無申告加算税は課されません(国税庁タックスアンサーNo.2024)。
- 法定申告期限から1か月以内に自主的に期限後申告をしている
- 納付すべき税額の全額を法定納期限までに納付している(口座振替納付の手続をした場合は、期限後申告書を提出した日まで)
- その申告書を提出した日の前日から起算して過去5年間に、無申告加算税または重加算税を課されたことがない
- この免除規定(期限内申告をする意思があったと認められる場合の不適用)を過去に受けたことがない
副業の無申告はどこから税務署に伝わるのか
副業の所得は「黙っていれば分からない」ものではありません。主に次の3つの経路から把握される可能性があります。
- 取引先が提出する支払調書などの法定調書——業務委託の発注元や一定のプラットフォームは、支払額等を記載した法定調書を税務署に提出する義務があります。本人の申告内容と法定調書の記載に齟齬があれば把握される可能性があります(国税庁「法定調書に関するFAQ」)
- 住民税の特別徴収税額決定通知——勤務先は毎年、従業員の給与を記載した給与支払報告書を市区町村に提出します。市区町村はこれと本人の所得(確定申告や住民税申告の内容)をもとに住民税額を計算し、特別徴収税額決定通知書を勤務先に送付します。副業分の所得が含まれていると税額が本業の給与水準に比べて増え、勤務先の経理担当者が気づく可能性があります。この経路を避けたい場合、申告時に納税方法として「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ方法があります。ただし副業が給与(アルバイト等)の場合はこの方法は選べません。詳しくは確定申告書 第二表「自分で納付」の書き方で解説しています
- 税務署による反面調査——税務署は必要に応じて、納税者本人ではなく取引先など第三者に対して調査を行い、支払額や振込記録を確認することがあります
よくある誤解の訂正
| よくある理解 | 実際は |
|---|---|
| 放置した期間の後半は延滞税が年9.1%で膨らむ | 期限後申告の納期限は「申告書を提出した日」。申告と同時に全額納付すれば、法定納期限の翌日から納付日までの全期間が低い割合(令和8年は年2.8%)で計算されます(国税庁No.9205注1) |
| 延滞税は加算税にもかかるので雪だるま式に増える | 「延滞税は本税だけを対象として課されるものであり、加算税などに対しては課されません」(国税庁No.9205)。加算税に利息はつきません |
| 税務署から通知が来てから申告しても同じ | 事前通知の前か後かで税率が5%と10%(50万円超は15%・25%)に分かれ、調査を受けた後はさらに15%〜30%になります。連絡が来る前の自主申告が最も軽い区分です |
| 副業が赤字でも無申告加算税が心配 | 無申告加算税は「納付すべき税金」に税率を乗じて計算するため、納付すべき税額が生じなければ課されません。ただし住民税の申告は別途必要です(副業がまだ稼げていない場合の確定申告) |
| 所得20万円以下なら何の手続きもいらない | 不要になるのは所得税の確定申告だけで、住民税の申告は必要です。20万円ルールの正確な判定はこちらの記事で解説しています |
隠す・偽ると重加算税40%になる
ここまでは「うっかり申告を忘れた」場合の話です。売上を隠す、架空の経費を計上するなど、課税標準等の計算の基礎となる事実を隠蔽または仮装して申告しなかった場合は、無申告加算税に代えて重加算税(税額の40%)が課されます(国税通則法68条2項)。さらに、過去に無申告加算税等を課されたことがあるなど一定の場合には、これに10%が加算されます(同条4項)。
気づいてしまった人が次にやることは決まっています。確定申告のやり方5ステップの手順どおりに、期限後申告として申告書を作り、提出したその日に納付してください。ここまでの試算のとおり、それが上乗せを最小にする方法です。
まとめ
- 無申告の上乗せは無申告加算税(5%〜30%)と延滞税の二重構造。ただし加算税は5,000円未満、延滞税は1,000円未満なら全額切り捨てられる(国税通則法119条4項)
- 当サイト試算では、本業500万円・副業所得50万円を1年放置した場合の上乗せは自主申告なら1,100円、調査を受けてからだと7,100円。差を決めるのは放置期間より「自分から申告したかどうか」
- 期限後申告の納期限は「申告書を提出した日」。申告と同時に納付すれば延滞税は低い割合のままで、年9.1%は申告後さらに2か月放置した場合にかかる
- 法定申告期限から1か月以内の自主申告+法定納期限(3月15日)までの全額納付なら、無申告加算税は課されない
- 無申告を続けると前年・前々年分の加重措置10%が効き、隠蔽・仮装があれば重加算税40%。気づいた時点で申告と納付を同じ日に済ませるのが最も安い