副業の経費にできるもの一覧
|家事按分のやり方と証拠の残し方【2026年版】
副業の必要経費とは、その収入を得るために直接要した費用と、その年に生じた販売費・一般管理費その他業務上の費用のことです(国税庁タックスアンサーNo.2210)。副業の所得は「収入金額 − 必要経費」で計算するため、経費を正しく拾えるかどうかで、確定申告が必要かどうかの20万円判定にも、納める税額にも差が出ます。この記事では、副業で経費にできるものを費目別に整理し、自宅の家賃や通信費を按分する「家事按分」のやり方、10万円以上のものを買ったときの扱い、そして按分の根拠をどう残すかを解説します。
- 家賃・通信費・電気代などの家事関連費は、業務の遂行上直接必要な部分を明らかに区分できる金額に限って経費になる(国税庁No.2210)。全額は経費にできない
- 買ったものは取得価額10万円未満なら使い始めた年に全額経費、10万円以上20万円未満なら3年間で3分の1ずつ、20万円以上は原則として耐用年数による減価償却(No.2100)
- 白色申告では領収書・請求書などの書類は5年、収入金額と必要経費を記載した法定帳簿は7年の保存が必要(No.2080)
- 副業の必要経費とは何か——2つの条件
- 副業の経費にできるもの一覧(費目別)
- 家事按分のやり方——3つの基準と計算例
- 経費にできないもの・注意が必要なもの
- 10万円以上のものを買ったとき——3つのライン
- 証拠の残し方——領収書・帳簿の保存期間
- モデルケース:副業収入40万円の経費計算
副業の必要経費とは何か——2つの条件
結論として、副業の必要経費になるのは次の2つです(国税庁タックスアンサーNo.2210「必要経費の知識」)。
- 総収入金額に対応する売上原価その他、その総収入金額を得るために直接要した費用の額
- その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額
ポイントは「その副業の収入を得るために必要だったと説明できるか」です。同じ支出でも、副業と無関係なら経費になりません。逆に、副業のために使ったことを金額とセットで説明できるなら、費目の名前にこだわる必要はありません。
副業の経費にできるもの一覧(費目別)
会社員の副業でよく出てくる費目を、按分が必要かどうかで整理しました。「按分が必要」とは、私生活と共用しているため副業で使った割合分だけを経費にするという意味です。
| 費目 | 具体例 | 按分 |
|---|---|---|
| 支払手数料 | クラウドソーシングやフリマアプリの販売手数料、振込手数料、決済手数料 | 不要(全額) |
| 仕入れ・売上原価 | 物販で売れた商品の仕入代金、材料費 | 不要(全額) |
| 外注費 | 副業の作業を他の人に発注した費用 | 不要(全額) |
| 広告宣伝費 | 副業の集客用に出した広告、名刺の印刷代 | 不要(全額) |
| 新聞図書費 | 副業のために買った専門書・有料記事・業界誌 | 不要(全額) |
| 消耗品費 | 副業専用の文具、10万円未満の機器・ソフト | 私用兼用なら必要 |
| 通信費 | 自宅のインターネット回線、スマホの通信料 | 必要 |
| 地代家賃 | 自宅の家賃のうち作業スペース分 | 必要 |
| 水道光熱費 | 作業中の電気代 | 必要 |
| 旅費交通費 | 取材・打ち合わせ・仕入れのための移動費 | 副業目的の分のみ |
| 減価償却費 | 10万円以上のパソコン・カメラなど | 後述のルールに従う |
家事按分のやり方——3つの基準と計算例
家賃・通信費・電気代のように、1つの支出が家事上と業務上の両方にかかわる費用を家事関連費といいます。この場合に必要経費になるのは、国税庁No.2210の表現を借りれば「取引の記録などに基づいて、業務の遂行上直接必要であったことが明らかに区分できる場合のその区分できる金額」に限られます(根拠は所得税法施行令第96条)。つまり、説明できる基準で分けた分だけが経費です。
実務でよく使われる按分基準は次の3つです。どれを使うかは費目の性質に合わせて選び、選んだ理由も一緒に記録しておきます。
| 基準 | 計算方法 | 向いている費目 |
|---|---|---|
| 床面積の割合 | 作業スペースの面積 ÷ 住居全体の面積 | 家賃、住宅の火災保険料 |
| 使用時間の割合 | 副業に使った時間 ÷ 全体の使用時間(または活動時間) | 通信費、パソコン、スマホ |
| 使用日数の割合 | 副業に使った日数 ÷ 期間の日数 | 電気代、車両費 |
たとえば自宅のインターネット回線が年間6万円で、1週間の活動時間70時間のうち副業の作業が10時間なら、按分率は10 ÷ 70 ≒ 14%。経費計上額は6万円 × 14% = 8,400円となります。
経費にできないもの・注意が必要なもの
先に結論を書くと、副業と結びつかない支出、そして本人が納める税金や社会保険料は必要経費になりません。控除として別に扱われるものを経費に入れてしまう誤りが多いところです。
- 所得税・住民税——本人の税金であり、経費ではありません
- 国民年金・国民健康保険・健康保険料——社会保険料控除として所得控除で処理します
- 生命保険料・地震保険料——それぞれの所得控除で処理します
- 私的な飲食費・被服費——副業のために不可欠だと説明できない支出は対象外です
- 家族への支払い——原則として経費になりません(青色申告の青色事業専従者給与など、要件を満たす場合の例外があります)
- 副業に使っていない期間の費用——副業を始める前の支出は、開業費など別の扱いを検討します
10万円以上のものを買ったとき——3つのライン
パソコンやカメラのように長く使うものは、金額によって扱いが変わります。国税庁No.2100「減価償却のあらまし」に基づく3つのラインは次のとおりです。
| 取得価額 | 扱い | 経費になる時期 |
|---|---|---|
| 10万円未満(または使用可能期間1年未満) | 取得に要した金額の全額を必要経費に算入 | 使い始めた年に全額 |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産(一定の要件のもとで選択可) | 取得価額の合計額の3分の1を3年間の各年 |
| 20万円以上 | 法定耐用年数による減価償却が原則 | 耐用年数にわたって分割 |
加えて、青色申告をしている人には少額減価償却資産の特例があります。令和8年3月31日までに取得した取得価額10万円以上30万円未満の減価償却資産について、年間300万円に達するまでその年の必要経費に算入できる制度です(No.2100)。ただし利用には青色申告の承認が必要で、雑所得として申告している副業では使えません。
証拠の残し方——領収書・帳簿の保存期間
経費は「使った」だけでは足りず、「使ったと示せる」状態にしておく必要があります。保存義務の期間は申告の形態によって異なります。
| 区分 | 保存するもの | 期間 |
|---|---|---|
| 白色申告(事業所得等) | 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) | 7年 |
| 白色申告(事業所得等) | 請求書、納品書、送り状、領収書などの書類 | 5年 |
| 白色申告(事業所得等) | 法定帳簿以外の任意の帳簿、棚卸表その他の書類 | 5年 |
| 業務に係る雑所得(前々年分の収入金額が300万円超) | 現金預金取引等関係書類 | 5年 |
出典は国税庁No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」およびNo.1500「雑所得」です。副業が業務に係る雑所得で前々年分の収入金額が300万円以下なら書類の保存義務はありませんが、按分の根拠を示せるようにしておく実務上のメリットは変わりません。
モデルケース:副業収入40万円の経費計算
本業の給与収入450万円の会社員が、在宅の業務委託で年間40万円の収入を得ている場合の経費計算例です。按分率は説明のための一例で、実際の使用状況によって変わります。
| 費目 | 年間の支出 | 按分の根拠 | 按分率 | 経費計上額 |
|---|---|---|---|---|
| ノートパソコン | 80,000円 | 取得価額10万円未満のため全額算入できるが、私用と兼用なので使用時間で按分 | 50% | 40,000円 |
| 通信費(自宅回線) | 60,000円 | 1週間の活動時間70時間のうち副業の作業が10時間 | 約14% | 8,400円 |
| 支払手数料 | 20,000円 | 副業の報酬から直接差し引かれた手数料 | 100% | 20,000円 |
| 新聞図書費 | 12,000円 | 副業のために購入した専門書のみ | 100% | 12,000円 |
| 必要経費の合計 | 80,400円 | |||
このケースの副業の所得金額は、40万円 − 80,400円 = 319,600円です。20万円を超えるため、所得税の確定申告が必要になります(国税庁No.1900)。仮にパソコンを按分せず全額の8万円を計上していれば所得は279,600円になりますが、私用と兼用している以上、按分せずに全額を経費にすることは認められません。
逆に、経費を1円も拾わなければ所得は40万円になり、その差額の80,400円分だけ余分に所得税と住民税がかかります。実際に増える税額は本業の年収や利用できる控除によって変わるため、自分の数字で確認するのが確実です。
まとめ
- 副業の必要経費は「収入を得るために直接要した費用」と「販売費・一般管理費その他業務上の費用」(No.2210)
- 家賃・通信費・電気代などの家事関連費は、業務上必要な部分を明らかに区分できる金額だけが経費。床面積・使用時間・使用日数などの説明できる基準で按分する
- 買ったものは10万円未満なら全額、10万円以上20万円未満なら3年で3分の1ずつ、20万円以上は原則として耐用年数で償却(No.2100)
- 所得税・住民税・社会保険料・生命保険料は経費ではなく、所得控除で処理する
- 白色申告なら法定帳簿7年・領収書等5年の保存が必要(No.2080)。雑所得でも前々年分の収入金額が300万円超なら5年保存(No.1500)