副業の20万円ルール完全ガイド
|「収入」と「所得」の違いで申告の要否が変わる【2026年版】
20万円ルールとは、給与を1か所から受けていて年末調整を受けた会社員は、給与所得・退職所得以外の各種所得金額の合計が年20万円以下であれば所得税の確定申告が不要になる取り扱いです(国税庁タックスアンサーNo.1900)。ただし副業が業務委託やネット収入なのか、アルバイトなどの給与なのかによって「20万円」を計算するときの基準(所得か、収入そのままか)が変わります。この記事では判定の仕組みを整理したうえで、同じ副業収入24万円が区分と経費でいくら違う結果になるのかを、当サイトのシミュレーターと同じ計算式で試算しました。判定では不利に見える給与副業のほうが、税額では軽くなることがある——という結果も出ています。
- 業務委託・フリマ・アフィリエイトなど雑所得・事業所得の副業は、収入から必要経費を引いた「所得」が20万円以下かどうかで判定する
- 副業がアルバイト・パートなど給与の場合は、2か所目の給与の「収入金額」(経費控除なしの額面)を他の所得と合算して20万円判定を行う(国税庁No.1900)
- 【当サイト試算】本業年収500万円・副業収入24万円で比べると、雑所得(経費0円)の税負担は40,600円、2か所目の給与なら30,900円。判定では不利な給与副業のほうが税額は9,700円軽い(給与所得控除が自動的に効くため)
- 2か所以上から給与がある人でも、給与収入から一定の所得控除を引いた額が150万円以下で他の所得が20万円以下なら申告不要——見落とされやすい特例がある
- 20万円ルールは所得税の確定申告の特例であり、住民税には適用されないため、20万円以下でも住民税の申告は別途必要
- そもそも誰が使える特例なのか(国税庁No.1900の3つの条件)
- 業務委託・ネット収入は「所得」で判定——経費率で収入の上限はどこまで伸びるか
- 副業がアルバイトだと、なぜ「収入」で判定されるのか
- 【当サイト試算】同じ副業収入24万円で、税金はいくら違うのか
- あなたはどれに当てはまる?——判定チャート
- 見落としやすい「150万円」の特例
- 20万円ルールをめぐる5つの誤解
- 20万円以下でも、あえて申告したほうが得になるとき
- 住民税に20万円ルールはない
そもそも誰が使える特例なのか——国税庁No.1900の3つの条件
会社員は勤務先の年末調整によって所得税の精算が完了するため、本来なら確定申告をしなくても納税が完結します。しかし副業などで給与以外の所得があると、その分の税額が年末調整には反映されていません。そこで国税庁は、給与所得者のうち確定申告が必要になる人を条件で区切っており、そこから外れた人は申告をしなくてよい——という組み立てになっています(国税庁タックスアンサーNo.1900「給与所得者で確定申告が必要な人」)。副業に関係するのは次の3つです。
| No.1900の条件 | 内容 | 副業をしている人への意味 |
|---|---|---|
| (1) 高額給与 | 給与の年間収入金額が2,000万円を超える人 | 副業の額に関係なく確定申告が必要。20万円ルールは使えない |
| (2) 給与が1か所 | 給与1か所・全部が源泉徴収の対象で、給与所得・退職所得以外の各種の所得金額の合計が20万円を超える人 | 副業が業務委託・ネット収入などの場合。「所得金額」=収入−必要経費で判定する |
| (3) 給与が2か所以上 | 給与2か所以上・全部が源泉徴収の対象で、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額との合計が20万円を超える人 | 副業がアルバイト・パートの場合。給与部分は「収入金額」のまま足す |
つまり「20万円ルール」という単一の規定があるわけではなく、(2)と(3)のどちらに当てはまるかで20万円に何を当てはめて数えるかが変わるのが実態です。ここを読み違えると結論が逆になります。
業務委託・ネット収入は「所得」で判定——経費率で収入の上限はどこまで伸びるか
業務委託の報酬、ネット物販、アフィリエイト収入など、給与ではない形で得る副業収入は雑所得または事業所得に区分されます。この場合の20万円判定は、収入から必要経費を差し引いた後の「所得金額」で行います。したがって収入が20万円を超えていても、必要経費を引いた所得が20万円以下になれば、20万円ルールの対象内(=所得税の申告不要)となる余地があります。
では経費がいくらかかっていると、収入はどこまでなら所得20万円以内に収まるのか。20万円 ÷(1 − 経費率)で求められます。
| 収入に対する経費の割合 | 所得20万円ちょうどになる副業収入 | この収入までなら所得税の申告不要 |
|---|---|---|
| 0%(経費なし) | 200,000円 | 20.0万円 |
| 10% | 222,222円 | 22.2万円 |
| 20% | 250,000円 | 25.0万円 |
| 30% | 285,714円 | 28.5万円 |
| 40% | 333,333円 | 33.3万円 |
| 50% | 400,000円 | 40.0万円 |
副業がアルバイトだと、なぜ「収入」で判定されるのか
副業がアルバイトやパートなど2か所目の給与として支払われる場合は、上の表の(3)が適用されます。給与部分については年末調整されなかった給与の収入金額をそのまま他の所得と合算して20万円と比べます。
雑所得のように必要経費を差し引く計算はありません。給与所得控除を引いた後の「所得」でもなく、控除前の「収入」で比較します。給与所得控除は勤務先ごとに配分されるものではなく年間の給与収入の合計に対して1回だけ計算されるため、2か所目の給与だけを取り出して「所得」を出すことができない——という所得税の構造上の理由によるものです。
| 副業の形態 | 20万円判定に使う金額 | 経費・控除の扱い |
|---|---|---|
| 業務委託・フリーランス(雑所得・事業所得) | 収入 − 必要経費 = 所得 | 実際にかかった経費を引ける |
| ネット物販・アフィリエイト(雑所得・事業所得) | 収入 − 必要経費 = 所得 | 同上(仕入原価も含む) |
| 副業アルバイト・パート(2か所目の給与) | 年末調整されなかった給与の収入金額 | 判定の段階では何も引けない |
所得区分そのものの分かれ目(どこまでが雑所得で、どこからが事業所得か)については雑所得と事業所得の判定基準の記事、2か所給与の年末調整と源泉徴収票の扱いは副業アルバイトで給与が2か所になる場合の記事で詳しく扱っています。
【当サイト試算】同じ副業収入24万円で、税金はいくら違うのか
ここまでは判定の話です。では実際の税額はどうなるのか。「経費を引けない給与副業は不利」と説明されることが多いのですが、税額まで計算してみると話が変わります。当サイトのシミュレーターと同じ計算式(国税庁の速算表・令和8年度税制改正後の基礎控除と給与所得控除・住民税所得割10%)で、本業年収500万円・副業収入24万円に固定し、区分と経費の組み合わせだけを振って試算しました。
| 副業の区分と経費 | 20万円判定に使う額 | 判定 | 増える所得税 | 増える住民税 | 税金の合計 | 収入から経費と税を引いた残り |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 雑所得・経費0円 | 24.0万円 | 超(申告必要) | 16,600円 | 24,000円 | 40,600円 | 199,400円 |
| 雑所得・経費2.4万円(10%) | 21.6万円 | 超(申告必要) | 14,100円 | 21,600円 | 35,700円 | 180,300円 |
| 雑所得・経費4.8万円(20%) | 19.2万円 | 以下(申告不要) | 0円※ | 19,200円 | 19,200円 | 172,800円 |
| 雑所得・経費7.2万円(30%) | 16.8万円 | 以下(申告不要) | 0円※ | 16,800円 | 16,800円 | 151,200円 |
| 2か所目の給与・24万円 | 24.0万円 | 超(申告必要) | 11,700円 | 19,200円 | 30,900円 | 209,100円 |
※申告不要を選んだ場合の金額です。任意で確定申告をした場合、経費4.8万円のケースは所得税11,700円、経費7.2万円のケースは9,200円が発生します。条件:単身の会社員・社会保険料は本業年収の14.5%(72.5万円)で概算・扶養控除やiDeCoなどその他の控除なし・住民税は所得割のみ(均等割は副業の有無で変わらないため除外)。
判定では不利な給与副業が、税額では有利になる理由
上の表で注目したいのは、雑所得で経費を4.8万円(20%)計上したケースと、2か所目の給与24万円のケースが、まったく同じ課税所得になっている点です。どちらも合計所得金額に加わるのは19.2万円で、任意申告した場合の所得税も同額の11,700円、住民税も同額の19,200円です。
理由は給与所得控除です。本業年収500万円の人が2か所目の給与24万円を得ると、年間の給与収入は524万円になります。給与収入660万円以下の帯では給与所得控除が「収入×20%+44万円」なので、増えた24万円のうち20%(4.8万円)が自動的に控除され、給与所得の増加は19.2万円で止まります。給与副業には、経費の領収書を集めなくても収入の20%相当が引かれる「みなし経費」のような効果があるわけです。
ただしこの効果の大きさは本業年収で変わります。同じ副業収入24万円・経費0円で本業年収だけを振ってみると、次のようになりました。
| 本業の年収 | 雑所得24万円 (経費0円)の税金 | 2か所目の給与 24万円の税金 | 差 | 給与副業で合計所得に 加わる額 |
|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 36,200円 | 25,300円 | 10,900円 軽い | 16.8万円(控除30%) |
| 400万円 | 36,300円 | 29,000円 | 7,300円 軽い | 19.2万円(控除20%) |
| 500万円 | 40,600円 | 30,900円 | 9,700円 軽い | 19.2万円(控除20%) |
| 600万円 | 48,600円 | 38,900円 | 9,700円 軽い | 19.2万円(控除20%) |
| 700万円 | 73,000円 | 65,700円 | 7,300円 軽い | 21.6万円(控除10%) |
| 1,000万円 | 73,000円 | 73,000円 | 差なし | 24.0万円(控除なし) |
本業年収が850万円に達すると、この差は消えます。給与所得控除は給与収入850万円で195万円の上限に達して増えなくなるため、そこから先の人が2か所目の給与を得ても控除は1円も増えず、副業収入がまるごと所得に乗るからです。年収の高い人にとっては「給与副業のみなし経費」は存在しません。
あなたはどれに当てはまる?——判定チャート
上から順に見て、最初に当てはまったところが結論です。
| あなたの状況 | 20万円と比べる金額 | 結論 |
|---|---|---|
| ① 本業の給与年収が2,000万円を超える | — | 副業の額に関係なく確定申告が必要(No.1900(1))。以下は読まなくてよい |
| ② 医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ特例を使わない)・住宅ローン控除の初年度などで、どうせ確定申告をする | — | 20万円以下の副業所得もその申告書に含めなければならない |
| ③ 給与は本業の1か所だけ/副業は業務委託・ネット収入など | 副業の所得(収入−必要経費)と他の所得の合計 | 20万円超→確定申告が必要。20万円以下→所得税の申告は不要(住民税の申告は必要) |
| ④ 副業がアルバイト・パート(給与が2か所以上) | 年末調整されなかった給与の収入金額+他の所得 | 同じ判定だが、給与部分から経費は引けない |
| ⑤ ④に当てはまり、かつ給与収入の合計から一定の所得控除を引いた額が150万円以下 | 他の所得の合計だけ | 他の所得が20万円以下なら申告不要(下の「150万円の特例」参照) |
| ⑥ 副業報酬から源泉徴収されている/赤字がある | — | 20万円以下でも任意で申告すると還付を受けられることがある |
③④で「20万円以下」に着地した人も、それで終わりではありません。住民税の申告が残ります(後述)。
見落としやすい「150万円」の特例
2か所以上から給与を受けている人の話には、もう一段の例外があります。国税庁No.1900の注記では、給与の収入金額の合計額から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ給与所得・退職所得以外の各種所得金額の合計額が20万円以下の人は申告不要とされています。
言い換えると、給与2か所の合計収入がそれほど多くなく、社会保険料控除・生命保険料控除・扶養控除などを引いた残りが150万円以下に収まる人は、2か所目の給与収入が20万円を超えていても所得税の確定申告をしなくてよい可能性があるということです。パート収入が2か所ある人や、年の途中で退職して短期のアルバイトを掛け持ちした人が該当しやすい条件です。
20万円ルールをめぐる5つの誤解
- 「20万円は副業の売上(収入)で判定する」→ 区分によって違う。業務委託・ネット収入なら経費を引いた所得、副業アルバイトなら収入そのままです。同じ「24万円」でも前者は経費次第で20万円以下になり得ますが、後者は必ず超えます
- 「20万円以下なら何の手続きもいらない」→ 住民税の申告が残る。20万円ルールは所得税だけの特例です。市区町村への住民税申告をしないと、本来納めるべき住民税が申告漏れになります
- 「副業先が2つあるから、それぞれ20万円まで大丈夫」→ 合計で判定する。No.1900の条文は「各種の所得金額の合計額」です。15万円と12万円の副業が2つあれば合計27万円で、確定申告が必要になります
- 「本業の年収がいくらでも、副業20万円以下なら申告不要」→ 2,000万円超は例外なく必要。給与年収が2,000万円を超える人はそもそも年末調整の対象外で、副業がなくても確定申告が必要です
- 「20万円以下なのに申告するのはルール違反」→ 任意申告はできる。20万円ルールは「しなくてよい」という免除であって「してはいけない」という禁止ではありません。源泉徴収された報酬がある人は、申告したほうが戻ってくることがあります
20万円以下でも、あえて申告したほうが得になるとき
20万円ルールに当てはまる人が任意で確定申告をして有利になるのは、主に次の3つの場合です。
- 副業報酬から源泉徴収されている。原稿料やデザイン料などは支払時に10.21%が源泉徴収されていることがあります。副業所得が小さければ本来の税額より多く天引きされている場合が多く、申告すれば差額が還付されます
- 事業所得で赤字がある。事業所得の赤字は給与所得と損益通算でき、本業で納めた所得税が戻ることがあります(雑所得の赤字は給与所得と通算できません)
- 青色申告の特典を使いたい。青色申告なら赤字を翌年以降3年間繰り越せますが、申告しなければ権利は発生しません
逆に、経費0円で源泉徴収もされていない副業所得だけなら、申告しても還付は生じません。手続きの手間だけが増えるので、20万円以下なら申告不要を選ぶのが合理的です。実際の申告手順は確定申告のやり方5ステップの記事にまとめています。
住民税に20万円ルールはない
20万円ルールは所得税の確定申告についての特例であり、住民税にはこの免除がありません。副業所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、原則としてお住まいの市区町村へ住民税の申告を別途行う必要があります。所得税の確定申告をした場合は、その内容が税務署から自治体に共有されるため、住民税の申告を重ねて行う必要はありません。
上の試算表で「所得税0円・住民税だけ発生」の行があったのは、この非対称のためです。副業所得16.8万円でも住民税16,800円は生じます。申告書の書き方や窓口での手続きは住民税申告のやり方の記事、確定申告をする場合に住民税を給与天引きにしない手続きは第二表「自分で納付」の記事で扱っています。
まとめ
- 20万円ルールは単一の規定ではなく、国税庁No.1900の(2)(給与1か所)と(3)(給与2か所以上)のどちらに当てはまるかで、20万円に当てはめる金額が変わる
- 業務委託・フリマなどの雑所得・事業所得は「所得」(収入−経費)で判定するため、経費率20%なら収入25万円、30%なら28.5万円まで所得20万円に収まる
- 副業がアルバイトなど2か所目の給与の場合は、経費を引かない「収入金額」で判定するため、20万円を1円でも超えれば申告が必要
- 【当サイト試算】判定では不利な給与副業のほうが、税額では軽くなることがある。本業年収500万円・副業24万円で雑所得(経費0円)40,600円 vs 2か所目の給与30,900円。給与所得控除の20%が「みなし経費」のように働くためで、この効果は本業年収850万円に達すると消える
- 給与2か所以上でも、給与収入から一定の所得控除を引いた額が150万円以下かつ他の所得20万円以下なら申告不要という注記がある
- 源泉徴収された報酬や事業所得の赤字がある人は、20万円以下でも任意申告で還付を受けられる
- 20万円ルールは所得税だけの特例で、住民税には適用されず別途申告が必要