副業の住民税申告のやり方
|20万円以下でも必要な手続き【令和9年度分】
住民税の申告とは、前年中の所得を1月1日現在の住所地の市区町村へ届け出る手続きで、所得税の確定申告と違って「20万円以下なら不要」という省略の取り扱いがありません(名古屋市「給与所得者で副収入がある場合、市民税・県民税の申告は?」)。副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしなかった人は、代わりに住民税の申告が必要になります。この記事では、次に手続きの対象になる令和9年度分(2026年=令和8年中の所得、期限は2027年3月15日)を前提に、自分に申告義務があるかの判定、提出先と必要書類、会社に副業の情報を伝えないための「自分で納付」の選び方までを、公的機関の案内に基づいて解説します。所得税は1円もかからないのに住民税だけかかる人がいる理由も、当サイトのシミュレーターで実際に計算した数字で示します。
- 副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合、1月1日現在の住所地の市区町村への住民税申告が必要(住民税に20万円ルールの省略規定はない)
- 次に来る令和9年度分(2026年=令和8年中の所得)の申告期限は2027年3月15日(月)。原則3月15日で、この日が土日にあたる年だけ翌開庁日にずれる
- 所得税の確定申告書を税務署に提出した人は、住民税の申告をしたものとみなされるため二重に出す必要はない
- 令和9年度分から、住民税の非課税ライン(給与収入のみなら119万円※1級地)と所得税がかからないライン(178万円)の差はさらに開く。所得税は0円なのに住民税だけかかる人が増える
- 所得税で申告不要なら、住民税も不要では?
- 自分は申告が必要か——3つの条件で判定
- 逆に、出さなくていいのはどんな人か
- 住民税申告のやり方——4ステップ
- 申告書で「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
- 副業所得15万円で住民税はいくら増えるか
- 所得税は0円なのに住民税だけかかる人がいる(当サイト試算)
- 「そうだと思っていた」を訂正する5つの誤解
- 出し忘れたまま放置するとどうなるか
所得税で申告不要なら、住民税も不要では?
結論は、所得税と住民税は別の税金で、20万円ルールは所得税にしかないからです。
年末調整を受けた給与所得者は、給与所得や退職所得以外の所得が年間20万円以下であれば所得税の確定申告をしなくてよい、という取り扱いがあります(国税庁タックスアンサーNo.1900)。一方で住民税(個人住民税=市町村民税・道府県民税)にはこれに対応する規定がありません。福岡市の令和8年度「市民税・県民税 申告の手引き」も、所得税において給与所得以外の所得が20万円以下のときは確定申告をする必要はないが、市県民税においては申告をする必要があると明記しています。
つまり、副業の所得が20万円以下の会社員がとるべき行動は「何もしない」ではなく、「確定申告はしないが、住民税の申告はする」です。
自分は申告が必要か——3つの条件で判定
先に答えを書くと、次の3つすべてに当てはまる人は住民税の申告が必要です。福岡市の申告の手引きに示された条件を、次に対象となる令和9年度分に当てはめた形で整理しました。
- 令和9年(2027年)1月1日にその市区町村に住所があった——年明けに引っ越しても、1月1日に住んでいた自治体が提出先です
- 令和8年(2026年)中に所得があった——1月1日から12月31日までに受け取った分で判定します
- 次の「出さなくていい人」に該当しない
会社員の副業でとくに該当しやすいのは、横浜市が挙げている次のようなケースです。いずれも「所得税では申告不要だが住民税では申告が必要」という状態にあたります。
| 状況 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 1か所から給与を受け、給与以外の所得の合計が20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 2か所以上から給与を受け、年末調整されなかった給与収入と給与以外の所得の合計が20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 公的年金等の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 副業の所得が20万円を超える | 必要 | 確定申告で足りる(別途不要) |
逆に、出さなくていいのはどんな人か
次のいずれかに当てはまる人は、住民税の申告をする必要がありません(福岡市の手引き、横浜市の案内)。
- 所得税の確定申告書を税務署に提出した(する予定がある)——確定申告書を提出した人は、同時に住民税の申告をしたものとみなされます。申告書のデータが市区町村に回るためです
- 給与所得および公的年金等に係る所得のみ——ただし社会保険料控除・生命保険料控除・医療費控除などを受ける場合、勤務先から給与支払報告書が提出されていない場合、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合は申告が必要です
- 合計所得金額が43万円以下——福岡市の手引きでは申告不要としつつ、非課税証明書の基礎資料や国民健康保険・保育所等の収入状況の把握に使われるため、申告書の提出に協力を求めています
住民税申告のやり方——4ステップ
手続きの流れはシンプルです。確定申告と比べて計算する項目が少なく、必要書類も限られます。
ステップ1:期限と提出先を確認する
期限は原則として毎年3月15日で、3月15日が土曜日または日曜日にあたるときは翌開庁日が期限になります(横浜市)。次に対象となる令和9年度分(2026年中の所得)は、2027年3月15日が月曜日にあたるため、原則どおり2027年3月15日が期限です。提出先は賦課期日である1月1日現在の住所地の市区町村で、区がある市では区役所の課税課・税務課が窓口になります。年明けに引っ越した場合も、1月1日時点に住んでいた自治体が提出先です。
ステップ2:申告書を入手する
市区町村のウェブサイトから様式(PDF)をダウンロードするか、窓口で受け取ります。名称は「市民税・県民税申告書」「住民税申告書」など自治体によって異なります。福岡市のようにオンラインで申告書を作成し税額試算までできる自治体や、eLTAXによる電子申告に対応している自治体もあります(横浜市)。
ステップ3:収入・所得と控除を記入する
用意する書類は次のとおりです。
- 本業の源泉徴収票——給与収入の金額と、年末調整で受けた控除の内容を転記します
- 副業の収入がわかるもの——支払明細、報酬の振込記録、支払調書など
- 経費の領収書と集計——雑所得は「収入金額 − 必要経費」で所得を計算します
- 年末調整で申告しなかった控除の証明書——医療費控除の明細書、生命保険料控除証明書など
- マイナンバーの番号確認書類・本人確認書類
ステップ4:納税方法を選んで提出する
後述する納税方法の選択欄にチェックを入れ、窓口・郵送・電子申告のいずれかで提出します。郵送の場合は本人確認書類の写しを同封します。提出後、税額が決まると6月ごろに納税通知書が届きます。
申告書で「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
結論として、多くの自治体の住民税申告書には、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税の納税方法を選ぶ欄があります。広島市の「令和8年度分市民税・県民税申告書の書き方」では、給与から差し引くことを希望する場合は「給与から差引き(特別徴収)」に、給与から差し引かずに納付書・キャッシュレス納付・口座振替で納めることを希望する場合は「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れるよう案内されています。
| 納税方法 | 納め方 | 会社に届く通知 |
|---|---|---|
| 給与から差引き(特別徴収) | 本業の給与から毎月天引き | 副業分を含んだ税額が通知される |
| 自分で納付(普通徴収) | 自宅に届く納付書などで自分で納付(年4回が一般的) | 本業の給与分のみが通知される |
「自分で納付」を選べば、会社に届く住民税の決定通知に載る税額は本業の給与に対応する分だけになります。副業の所得に対応する住民税は、自宅に届く納付書などで自分で納めます。
副業所得15万円で住民税はいくら増えるか
本業の給与収入450万円の会社員が、業務委託の副業で年間の所得(収入 − 経費)を得た場合に、住民税がどれだけ増えるかの目安です。住民税の所得割の税率は所得に対して10%(道府県民税4%、市町村民税6%)という標準税率が用いられます(総務省「個人住民税」)。
| 副業の所得 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 | 増える住民税の目安(所得割10%) |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 不要 | 必要 | 約5,000円 |
| 10万円 | 不要 | 必要 | 約10,000円 |
| 15万円 | 不要 | 必要 | 約15,000円 |
| 20万円(ちょうど) | 不要 | 必要 | 約20,000円 |
| 25万円 | 必要 | 確定申告で足りる | 約25,000円+所得税 |
副業所得15万円のケースを追うと、所得税は20万円ルールで確定申告が不要になるため、この15万円に対する所得税はかかりません。一方で住民税は15万円が課税対象に加わるため、15万円 × 10% = 約15,000円の所得割が増えます。均等割は所得の多少で変わらない定額部分(標準税額4,000円+森林環境税1,000円)なので、副業所得が増えても金額は変わりません。
ここで押さえておきたいのが、令和9年度分(2026年中の所得)から、住民税と所得税の控除額の差がさらに開くことです。給与所得控除の最低保障額は令和9年度・令和10年度の住民税で74万円になります(名古屋市「令和9年度以降適用される市民税・県民税に関する主な税制改正」)。一方で住民税の基礎控除は最高43万円のまま据え置きで、所得税の基礎控除(合計所得489万円以下なら104万円)とは61万円もの開きがあります。この差が、次に説明する「所得税は0円なのに住民税だけかかる」状態を生みます。
所得税は0円なのに住民税だけかかる人がいる(当サイト試算)
副業をしている人のなかには、確定申告をしても所得税が1円も出ないのに、住民税の申告と課税だけが発生する層があります。本業がパート・アルバイトや時短勤務で年収が低めの人、年の途中で転職・休職した人がここに入ります。
理由は控除額の差です。所得税は「給与所得控除74万円+基礎控除104万円=給与収入178万円」まで税額が出ませんが、住民税が非課税になるのは合計所得45万円まで(給与収入のみなら119万円。※東京23区・政令市などの1級地の場合)。給与収入119万円から178万円までの59万円分は、所得税ゼロ・住民税課税という帯になります。
この帯に副業所得が加わるとどうなるかを、当サイトのシミュレーターと同じ計算ロジックで実際に計算しました。副業は業務委託などの雑所得で、所得(収入−経費)は年15万円。社会保険料控除・生命保険料控除などの所得控除は0円(勤務先の社会保険に加入していないケース)としています。
| 本業の給与収入 | 副業込みの 合計所得金額 | 所得税 (年・副業込み) | 住民税の所得割 (副業なしの場合) | 住民税の所得割 (副業所得15万円あり) |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 41万円 | 0円 | 非課税(0円) | 非課税(0円) |
| 110万円 | 51万円 | 0円 | 非課税(0円) | 5,500円 |
| 119万円 | 60万円 | 0円 | 非課税(0円) | 14,500円 |
| 130万円 | 71万円 | 0円 | 10,500円 | 25,500円 |
| 150万円 | 91万円 | 0円 | 30,500円 | 45,500円 |
| 163万円 | 104万円 | 0円(ここが上限) | 43,500円 | 58,500円 |
| 178万円 | 119万円 | 7,600円 | 58,500円 | 73,500円 |
| 200万円 | 141万円 | 18,800円 | 80,500円 | 95,500円 |
この表からわかることは3つあります。
- 本業110万円・119万円の行は、副業がなければ住民税は非課税でした。副業所得15万円が加わったことで合計所得が45万円を超え、課税に転じています。所得税は0円のままなので、この人が受け取る税金の通知は住民税だけです
- 所得税が出はじめるのは本業163万円から。副業所得15万円を合計所得に足したとき104万円(基礎控除の額)を超えるためです。副業がなければ178万円まで所得税は0円で、副業の15万円がゼロラインを15万円分だけ手前にずらしています
- 130万円以上の行では、副業ありとなしの住民税の差はどこも15,000円ちょうど。副業所得15万円 × 所得割10%です。本業の年収がいくらであっても住民税の増え方は変わりません(所得税は税率が変わるので増え方も変わります)
「そうだと思っていた」を訂正する5つの誤解
住民税の申告は、確定申告に比べて解説される機会が少ないぶん、思い込みが定着しやすい手続きです。よく見かける誤解と実際の取り扱いを並べます。
| よくある思い込み | 実際は |
|---|---|
| 副業所得が20万円以下なら、何の手続きもいらない | いらないのは所得税の確定申告だけ。住民税には20万円ルールに対応する省略規定がなく、市区町村への申告が必要(名古屋市・福岡市) |
| 確定申告をしたら、住民税の申告も別に出さなければならない | 不要。確定申告書を提出した人は住民税の申告をしたものとみなされる。二重に出すと自治体側で重複処理の手間が生じる |
| 住民税の申告をすると、そこで副業が会社に知られる | 申告そのものが会社に通知されるわけではない。会社に届くのは6月ごろの特別徴収税額の決定通知で、そこに載る税額を本業分だけにするために「自分で納付」を選ぶ |
| 「自分で納付」にチェックすれば絶対に知られない | 副業が2か所目の給与なら選べない(給与分は特別徴収が原則)。自治体の運用で特別徴収になることもある。確実な方法ではない |
| 住民税の申告書には副業の分だけ書けばよい | 本業の給与を含めて前年中の所得すべてを記載する。本業の源泉徴収票が手元に必要 |
出し忘れたまま放置するとどうなるか
住民税の申告は義務であり、放置すると次のような不利益があります。
- あとから課税されると延滞金が加わる——本来の納期限からの期間に応じて延滞金がかかります
- 所得を証明できない——課税・非課税証明書は申告内容が基礎資料になります(福岡市)。保育所の利用申込みや公営住宅の申込みで所得証明が必要になったときに出せません
- 国民健康保険料などの算定に影響する——退職して国民健康保険に加入する場合、保険料は前年の所得に基づいて算定されます
- 所得税の側で申告漏れが判明したときに一緒に精算される——副業の支払先が税務署に提出する支払調書などから所得税の無申告が判明した場合、住民税も遡って課税されます。所得税側のペナルティは副業を申告しないとどうなるかで解説しています
まとめ
- 住民税には20万円ルールに対応する省略規定がないため、副業の所得が20万円以下で確定申告をしない人は住民税の申告が必要
- 次に対象となる令和9年度分(2026年中の所得)の期限は2027年3月15日(月)、提出先は1月1日現在の住所地の市区町村。確定申告書を提出した人は二重には不要
- 納税方法欄で「自分で納付(普通徴収)」を選べば会社に届く通知額は本業分のみになるが、副業が給与の場合は選べない
- 住民税の所得割は標準税率10%。副業所得15万円なら増える住民税は約15,000円が目安で、本業の年収が変わってもこの額は変わらない
- 令和9年度分から給与所得控除の最低保障は74万円になる一方、住民税の基礎控除43万円は据え置き。当サイト試算では本業給与110万円+副業所得15万円で所得税0円・住民税5,500円と、住民税だけがかかる帯が生じる