副業の住民税申告のやり方
|20万円以下でも必要な手続き【2026年版】
住民税の申告とは、前年中の所得を1月1日現在の住所地の市区町村へ届け出る手続きで、所得税の確定申告と違って「20万円以下なら不要」という省略の取り扱いがありません(名古屋市「給与所得者で副収入がある場合、市民税・県民税の申告は?」)。副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしなかった人は、代わりに住民税の申告が必要になります。この記事では、自分に申告義務があるかの判定、令和8年度分の期限、提出先と必要書類、そして会社に副業の情報を伝えないための「自分で納付」の選び方までを、公的機関の案内に基づいて解説します。
- 副業の所得が20万円以下で所得税の確定申告をしない場合、1月1日現在の住所地の市区町村への住民税申告が必要(住民税に20万円ルールの省略規定はない)
- 令和8年度分(令和7年中の所得)の申告期限は2026年3月16日(月)。原則3月15日だが、2026年3月15日は日曜日のため翌開庁日にずれる
- 所得税の確定申告書を税務署に提出した人は、住民税の申告をしたものとみなされるため二重に出す必要はない
- なぜ20万円以下でも住民税の申告が必要なのか
- 自分は申告が必要か——3つの条件で判定
- 申告が不要になるケース
- 住民税申告のやり方——4ステップ
- 申告書で「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
- モデルケース:副業所得15万円で増える住民税
- 申告しないとどうなるか
なぜ20万円以下でも住民税の申告が必要なのか
結論は、所得税と住民税は別の税金で、20万円ルールは所得税にしかないからです。
年末調整を受けた給与所得者は、給与所得や退職所得以外の所得が年間20万円以下であれば所得税の確定申告をしなくてよい、という取り扱いがあります(国税庁タックスアンサーNo.1900)。一方で住民税(個人住民税=市町村民税・道府県民税)にはこれに対応する規定がありません。福岡市の令和8年度「市民税・県民税 申告の手引き」も、所得税において給与所得以外の所得が20万円以下のときは確定申告をする必要はないが、市県民税においては申告をする必要があると明記しています。
つまり、副業の所得が20万円以下の会社員がとるべき行動は「何もしない」ではなく、「確定申告はしないが、住民税の申告はする」です。
自分は申告が必要か——3つの条件で判定
先に答えを書くと、次の3つすべてに当てはまる人は住民税の申告が必要です。福岡市の令和8年度申告の手引きに示された条件を、令和8年度分(令和7年中の所得)に当てはめた形で整理しました。
- 令和8年(2026年)1月1日にその市区町村に住所があった
- 令和7年(2025年)中に所得があった
- 次の「申告が不要な人」に該当しない
会社員の副業でとくに該当しやすいのは、横浜市が挙げている次のようなケースです。いずれも「所得税では申告不要だが住民税では申告が必要」という状態にあたります。
| 状況 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 |
|---|---|---|
| 1か所から給与を受け、給与以外の所得の合計が20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 2か所以上から給与を受け、年末調整されなかった給与収入と給与以外の所得の合計が20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 公的年金等の収入が400万円以下で、それ以外の所得が20万円以下 | 原則不要 | 必要 |
| 副業の所得が20万円を超える | 必要 | 確定申告で足りる(別途不要) |
申告が不要になるケース
次のいずれかに当てはまる人は、住民税の申告をする必要がありません(福岡市の手引き、横浜市の案内)。
- 所得税の確定申告書を税務署に提出した(する予定がある)——確定申告書を提出した人は、同時に住民税の申告をしたものとみなされます。申告書のデータが市区町村に回るためです
- 給与所得および公的年金等に係る所得のみ——ただし社会保険料控除・生命保険料控除・医療費控除などを受ける場合、勤務先から給与支払報告書が提出されていない場合、年の途中で退職して年末調整を受けていない場合は申告が必要です
- 合計所得金額が43万円以下——福岡市の手引きでは申告不要としつつ、非課税証明書の基礎資料や国民健康保険・保育所等の収入状況の把握に使われるため、申告書の提出に協力を求めています
住民税申告のやり方——4ステップ
手続きの流れはシンプルです。確定申告と比べて計算する項目が少なく、必要書類も限られます。
ステップ1:期限と提出先を確認する
期限は原則として毎年3月15日で、3月15日が土曜日または日曜日にあたるときは翌開庁日が期限になります(横浜市)。2026年3月15日は日曜日にあたるため、令和8年度分の期限は2026年3月16日(月)です。提出先は賦課期日である1月1日現在の住所地の市区町村で、区がある市では区役所の課税課・税務課が窓口になります。年明けに引っ越した場合も、1月1日時点に住んでいた自治体が提出先です。
ステップ2:申告書を入手する
市区町村のウェブサイトから様式(PDF)をダウンロードするか、窓口で受け取ります。名称は「市民税・県民税申告書」「住民税申告書」など自治体によって異なります。福岡市のようにオンラインで申告書を作成し税額試算までできる自治体や、eLTAXによる電子申告に対応している自治体もあります(横浜市)。
ステップ3:収入・所得と控除を記入する
用意する書類は次のとおりです。
- 本業の源泉徴収票——給与収入の金額と、年末調整で受けた控除の内容を転記します
- 副業の収入がわかるもの——支払明細、報酬の振込記録、支払調書など
- 経費の領収書と集計——雑所得は「収入金額 − 必要経費」で所得を計算します
- 年末調整で申告しなかった控除の証明書——医療費控除の明細書、生命保険料控除証明書など
- マイナンバーの番号確認書類・本人確認書類
ステップ4:納税方法を選んで提出する
後述する納税方法の選択欄にチェックを入れ、窓口・郵送・電子申告のいずれかで提出します。郵送の場合は本人確認書類の写しを同封します。提出後、税額が決まると6月ごろに納税通知書が届きます。
申告書で「自分で納付(普通徴収)」を選ぶ
結論として、多くの自治体の住民税申告書には、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税の納税方法を選ぶ欄があります。広島市の「令和8年度分市民税・県民税申告書の書き方」では、給与から差し引くことを希望する場合は「給与から差引き(特別徴収)」に、給与から差し引かずに納付書・キャッシュレス納付・口座振替で納めることを希望する場合は「自分で納付(普通徴収)」にチェックを入れるよう案内されています。
| 納税方法 | 納め方 | 会社に届く通知 |
|---|---|---|
| 給与から差引き(特別徴収) | 本業の給与から毎月天引き | 副業分を含んだ税額が通知される |
| 自分で納付(普通徴収) | 自宅に届く納付書などで自分で納付(年4回が一般的) | 本業の給与分のみが通知される |
「自分で納付」を選べば、会社に届く住民税の決定通知に載る税額は本業の給与に対応する分だけになります。副業の所得に対応する住民税は、自宅に届く納付書などで自分で納めます。
モデルケース:副業所得15万円で増える住民税
本業の給与収入450万円の会社員が、業務委託の副業で年間の所得(収入 − 経費)を得た場合に、住民税がどれだけ増えるかの目安です。住民税の所得割の税率は所得に対して10%(道府県民税4%、市町村民税6%)という標準税率が用いられます(総務省「個人住民税」)。
| 副業の所得 | 所得税の確定申告 | 住民税の申告 | 増える住民税の目安(所得割10%) |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 不要 | 必要 | 約5,000円 |
| 10万円 | 不要 | 必要 | 約10,000円 |
| 15万円 | 不要 | 必要 | 約15,000円 |
| 20万円(ちょうど) | 不要 | 必要 | 約20,000円 |
| 25万円 | 必要 | 確定申告で足りる | 約25,000円+所得税 |
副業所得15万円のケースを追うと、所得税は20万円ルールで確定申告が不要になるため、この15万円に対する所得税はかかりません。一方で住民税は15万円が課税対象に加わるため、15万円 × 10% = 約15,000円の所得割が増えます。均等割は所得の多少で変わらない定額部分(標準税額4,000円+森林環境税1,000円)なので、副業所得が増えても金額は変わりません。
ちなみに、令和8年度分の個人住民税からは給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円に引き上げられています(神戸市「2026年度(令和8年度)からの住民税の主な改正内容」)。住民税の基礎控除は最高43万円で据え置きです(総務省「個人住民税」)。所得税の基礎控除とは金額が異なるため、所得税では税額が出ないのに住民税では出る、という状況が起こり得ます。
申告しないとどうなるか
住民税の申告は義務であり、放置すると次のような不利益があります。
- あとから課税されると延滞金が加わる——本来の納期限からの期間に応じて延滞金がかかります
- 所得を証明できない——課税・非課税証明書は申告内容が基礎資料になります(福岡市)。保育所の利用申込みや公営住宅の申込みで所得証明が必要になったときに出せません
- 国民健康保険料などの算定に影響する——退職して国民健康保険に加入する場合、保険料は前年の所得に基づいて算定されます
まとめ
- 住民税には20万円ルールに対応する省略規定がないため、副業の所得が20万円以下で確定申告をしない人は住民税の申告が必要
- 令和8年度分の期限は2026年3月16日(月)、提出先は1月1日現在の住所地の市区町村。確定申告書を提出した人は二重には不要
- 納税方法欄で「自分で納付(普通徴収)」を選べば会社に届く通知額は本業分のみになるが、副業が給与の場合は選べない
- 住民税の所得割は標準税率10%。副業所得15万円なら増える住民税は約15,000円が目安