確定申告書 第二表「自分で納付」の書き方
|住民税で会社にバレないための実務【2026年版】
「自分で納付」とは、確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄にある選択肢で、これに丸を付けると給与以外の所得(副業の雑所得・事業所得など)にかかる住民税だけを普通徴収(納付書や口座振替での自分納付)に切り替えられる仕組みです(国税庁・確定申告書等作成コーナーの案内による)。副業の住民税を会社に天引きさせず、給与からの天引き額を本業分だけに抑えたい会社員が使う手続きですが、書き方を間違えると意図せず特別徴収(給与天引き)にされてしまいます。この記事では、第二表への具体的な記入方法と、うまくいかないケースまで実務ベースで解説します。
- 第二表「住民税・事業税に関する事項」の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」に丸を付けると、副業分の住民税だけを普通徴収にできる
- 副業がアルバイトなど給与所得の場合は、その部分は特別徴収が原則で普通徴収を選べない(雑所得・事業所得の部分のみ選択可)
- 会社に届く通知書に載るのは税額だけで、副業の所得金額は載らない。だから会社の手がかりは「税額が給与に見合わない」の一点になる
- 丸の付け忘れや自治体側の取り扱いによっては、選択しても特別徴収にまとめられてしまうことがある
- 「自分で納付」で結局なにが変わるのか
- 第二表のどこに、なにを書くのか
- あなたは「自分で納付」を選べる?——条件別の早見チャート
- 【当サイト試算】書き忘れると、会社に届く税額はいくら跳ねるか
- 選んでも普通徴収にならないことがある
- ここを誤解している人が多い
- 納付書はいつ、いくら届くのか
「自分で納付」とは何か——普通徴収を選ぶための欄
会社員の住民税は、原則として勤務先が給与から天引きして納付する特別徴収という方式が取られています。副業で雑所得や事業所得が発生すると、確定申告によってその分の所得も本業の給与所得と合算され、住民税額が計算されます。何もしなければ、この合算後の住民税額がまとめて勤務先に通知され、給与から天引きされる仕組みです。
これに対して確定申告書第二表には、給与・公的年金等以外の所得にかかる住民税だけを、勤務先を経由せず自分で直接納付する(普通徴収)ことを選べる欄が用意されています。ここで「自分で納付」を選ぶと、天引きされる住民税は本業の給与所得分だけになり、副業分は自治体から自宅に送られてくる納付書や口座振替で自分が納めることになります。
第二表への具体的な記入方法
確定申告書第二表の下部には「住民税・事業税に関する事項」という欄があり、その中に「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」という項目があります。ここには「特別徴収」と「自分で納付」の2つの選択肢が並んでいるので、給与から天引きしたくない場合は「自分で納付」に丸を付けます。
- 紙の申告書:第二表下部の該当欄に手書きで丸を付ける
- 確定申告書等作成コーナー(e-Tax・書面印刷とも共通):住民税に関する入力画面で「自分で納付」を選択するチェック項目が表示されるので選ぶ
- 会計ソフト経由でe-Taxする場合:住民税の徴収方法を設定する画面があるので「自分で納付」を選択
あなたは「自分で納付」を選べる?
この手続きが使えるかどうかは、副業の所得区分と、そもそも確定申告をするかどうかで変わります。国税庁・確定申告書等作成コーナーは「給与所得に係る住民税は原則、特別徴収によるものとされており、住民税の徴収方法は選択できません」と明記しています。自分がどの行に当てはまるかを確認してください。
| あなたの状況 | どこで手続きするか | 結果 |
|---|---|---|
| 業務委託・ネット収入など(雑所得・事業所得)で、所得が20万円超→ 確定申告をする | 確定申告書第二表で「自分で納付」に丸 | 副業分の住民税は自宅に納付書が届く |
| 同じく雑所得・事業所得だが、所得が20万円以下→ 所得税の確定申告はしない | 確定申告書を出さないので第二表は使わない。市区町村の住民税申告書で普通徴収を選ぶ | 同上(ただし住民税の申告自体は必要) |
| 副業がアルバイト・パート(給与所得) | 選択欄そのものが使えない | 副業分も本業の給与から天引きされる |
| 業務委託とアルバイトの両方をしている | 第二表で「自分で納付」に丸 | 雑所得・事業所得の部分だけ普通徴収。バイトの給与部分は天引きのまま |
| 副業が赤字(所得がマイナス) | 丸を付けても対象にならないことがある | 自治体の判断。そもそも分離すべき税額が出ない |
2行目に当てはまる人が意外と多く、ここが盲点になります。所得20万円以下でも住民税の申告は必要で、その申告書にも徴収方法の選択欄があります。手順は住民税の申告のやり方の記事で、20万円の判定そのものは20万円ルールの記事で詳しく扱っています。副業がアルバイトの人は2か所給与の記事もあわせてご覧ください。
書き忘れると、会社に届く税額はいくら跳ねるのか
「記載漏れは危ない」とはよく言われますが、実際にどれくらい数字が変わるのかを示した資料はあまりありません。そこで当サイトのシミュレーターと同じ計算式で、会社に通知される住民税額(所得割の年額)を条件別に試算しました。上段が「自分で納付」が通った場合=本業分のみ、下段が記載漏れなどで合算された場合です。
| 本業の年収 | 本業分のみ (自分で納付が通った場合) | +副業所得20万円 | +副業所得30万円 | +副業所得50万円 | +副業所得100万円 |
|---|---|---|---|---|---|
| 300万円 | 113,000円 | 133,000円 (+18%) | 143,000円 (+27%) | 163,000円 (+44%) | 213,000円 (+88%) |
| 400万円 | 172,500円 | 192,500円 (+12%) | 202,500円 (+17%) | 222,500円 (+29%) | 272,500円 (+58%) |
| 500万円 | 238,000円 | 258,000円 (+8%) | 268,000円 (+13%) | 288,000円 (+21%) | 338,000円 (+42%) |
| 600万円 | 303,500円 | 323,500円 (+7%) | 333,500円 (+10%) | 353,500円 (+16%) | 403,500円 (+33%) |
| 700万円 | 373,000円 | 393,000円 (+5%) | 403,000円 (+8%) | 423,000円 (+13%) | 473,000円 (+27%) |
副業は雑所得・経費0円、社会保険料は本業年収×14.5%、その他の所得控除なしの単身会社員として、住民税の所得割(税率10%・基礎控除43万円・調整控除2,500円)で試算した概算です。均等割・森林環境税(合計5,000円程度)は副業の有無で変わらないため含めていません。
給与明細では、月いくらの差になるか
住民税は6月〜翌年5月の12回に分けて天引きされます。合算された場合の1か月あたりの増加額は、本業年収に関係なく副業所得だけで決まります。
| 副業の所得(収入−経費) | 年間の増加額 | 1か月あたりの天引き増 |
|---|---|---|
| 20万円 | 20,000円 | 約1,670円 |
| 30万円 | 30,000円 | 約2,500円 |
| 50万円 | 50,000円 | 約4,170円 |
| 100万円 | 100,000円 | 約8,330円 |
副業所得が20〜30万円程度なら、月の差は1,700〜2,500円です。給与明細だけを見て気づかれる金額ではありませんが、会社に届く一覧表では従業員ごとの税額が並ぶため、前掲の「割合」のほうが目に付きやすいという違いがあります。なお6月分だけは端数調整で他の月と金額が異なるのが一般的です。
同じ30万円でも、雑所得と給与ではこう違う
副業の30万円が業務委託(雑所得)なのかアルバイト(給与)なのかで、増える税額も、隠せるかどうかも変わります。本業年収500万円で比べました。
| 副業30万円の内訳 | 合算された場合の会社への通知増 | 「自分で納付」を選べるか | 選んだ場合の会社への通知増 |
|---|---|---|---|
| 業務委託・ネット収入(雑所得) | +30,000円 | 選べる | 0円 |
| アルバイト・パート(給与) | +24,000円 | 選べない | +24,000円のまま |
アルバイトのほうが増加額は6,000円小さくなります。給与所得控除が本業と副業を合算した収入に対して1回だけ適用され、その分だけ所得の増え方が抑えられるためです。ところが「自分で納付」を選べないので、金額は小さいのに会社への通知額は必ず増えるという逆転が起きます。会社に知られたくないという観点だけで言えば、同じ30万円でもアルバイトのほうが不利です。所得区分の考え方は雑所得と事業所得の違いの記事で解説しています。
いずれも当サイトが国税庁の速算表と地方税の標準税率に基づいて試算した概算です。扶養控除・iDeCo・医療費控除などがある場合、また自治体独自の税率がある場合は金額が変わります。
「自分で納付」を選んでも特別徴収になってしまうケース
第二表に正しく記載しても、必ず希望どおりの普通徴収になるとは限りません。次のようなケースでは、自治体側の判断で特別徴収にまとめられることがあります。
- 給与以外の所得がマイナス(赤字)などの理由で、そもそも分離計算の対象にならない場合
- 自治体のシステムや運用方針により、給与所得以外の所得も一括して特別徴収に区分している場合
- ふるさと納税のワンストップ特例と確定申告を併用するなど、他の手続きとの兼ね合いで住民税の計算方法が変わる場合
ここを誤解している人が多い
この手続きについては、事実と違う説明が広まりやすい部分があります。よくある思い込みを一つずつ整理します。
「会社に届く通知書に、副業の所得金額が書いてある」
これは正確ではありません。住民税の税額決定通知書には特別徴収義務者用(会社が受け取るもの)と納税義務者用(本人が受け取るもの)の2種類があり、会社用に記載されるのは従業員ごとの税額と毎月徴収すべき月割額です。所得の内訳が記載されるのは本人用のほうで、自治体は個人情報保護のため所得控除欄などに圧着加工を施し、事業者に対して「圧着部分をはがさずに交付するように」と案内しています(豊島区の事業者向け案内など)。
つまり会社が副業に気づく手がかりは、金額の不自然さという一点だけです。前掲の試算表で「割合」を重視したのはこのためです。
「自分で納付にすれば住民税が安くなる」
安くなりません。これは納める方法を変える手続きであり、年間の税額そのものは同じです。むしろ普通徴収は年4回払いなので、12回に分けて天引きされる場合より1回あたりの負担は大きく感じます。副業所得100万円なら年10万円を4回、1回あたり2.5万円をまとめて払うことになります。
「一度選べば、翌年からも自動的に普通徴収になる」
なりません。徴収方法の選択は毎年の申告書ごとに行うものです。前年に選んでいても、今年の第二表で丸を付け忘れれば原則どおり特別徴収に戻ります。
「副業所得が20万円以下なら、この欄は関係ない」
確定申告書を提出しないだけで、住民税の話は残ります。20万円ルールは所得税の申告義務を免除するもので、住民税には同じ規定がありません。市区町村へ住民税の申告をする際に、その申告書で徴収方法を選ぶことになります。
「所得を20万円以下に見せれば手続きが要らなくなる」
納付書はいつ、いくら届くのか
「自分で納付」が通ったあと、実際にどう納めるのかを知らないまま申告する人が少なくありません。住民税は前年の所得に対して課税される後払いの税金なので、時間差があります。
| 時期 | 起きること |
|---|---|
| 2026年1〜12月 | 副業で所得が発生する(この年の分が課税対象) |
| 2027年2月16日〜3月15日 | 確定申告。第二表で「自分で納付」に丸を付ける |
| 2027年5〜6月ごろ | 会社に特別徴収税額の通知が届く(本業分のみ)/自宅に副業分の納税通知書・納付書が届く |
| 2027年6月・8月・10月/2028年1月 | 普通徴収の納期。年4回に分けて自分で納める |
普通徴収の納期は地方税法第320条により「6月、8月、10月及び翌年1月中において、当該市町村の条例で定める」とされています。細かい納期限は自治体ごとに異なるので、届いた納税通知書で確認してください。金額は前掲の試算のとおり、おおむね副業所得の10%を4分割した額(副業所得30万円なら1回あたり7,500円前後)です。1期目に端数がまとめられるのが一般的です。
丸を付け忘れたことに、あとから気づいたら
申告期限内であれば、正しい内容の確定申告書を出し直す(訂正申告)ことができます。期限後に気づいた場合、住民税の徴収方法は所得税の税額に影響しない項目なので、まずはお住まいの市区町村の住民税担当課に電話で相談するのが実務的です。当初課税の処理が済み、会社への通知が発送されたあと(おおむね5月以降)では変更が間に合わないこともあるため、気づいた時点で早めに連絡してください。
申告そのものの手順に不安がある場合は、確定申告のやり方5ステップの記事で全体の流れを確認できます。
まとめ
- 第二表「住民税・事業税に関する事項」の「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」欄で「自分で納付」に丸を付ける
- 普通徴収にできるのは雑所得・事業所得の部分のみ。給与所得の副業は特別徴収が原則で選べない
- 会社が受け取る通知書に載るのは税額だけ。手がかりは「給与に見合わない金額」という一点で、当サイト試算では本業年収が低い人ほど通知額の跳ね方(割合)が大きい
- 20万円以下で確定申告をしない場合は、市区町村の住民税申告書のほうで徴収方法を選ぶ
- 記載漏れや自治体の運用によっては、選んでも特別徴収になることがある。不安なら住民税窓口へ直接確認を
- 「自分で納付」は納め方を変える手続きであり、税額自体を減らすものではない