副業がアルバイトの場合の税金
——2か所給与の年末調整と確定申告【2026年版】
副業がアルバイト(給与)の場合の20万円ルールとは、給与を2か所以上から受けていて給与の全部が源泉徴収の対象となるとき、年末調整されなかった給与の収入金額と各種の所得金額(給与所得・退職所得を除く)との合計額が20万円を超える人は確定申告が必要になる、という取扱いです(国税庁タックスアンサーNo.1900)。業務委託の副業と違って経費を引く前の「収入金額」で判定されるのが最大のポイントです。この記事では、2か所から給与をもらうと税額の計算がどう変わるのか、なぜ「アルバイト年収100万円までは非課税」が副業では成り立たないのかを、国税庁の一次資料に基づいて整理します。
- 副業がアルバイトなら判定基準は「収入金額」が年20万円超。経費も給与所得控除も引かないため、月1万7千円程度の給与でラインに達する(国税庁No.1900)
- 年末調整は本業1か所だけ。副業先の給与は税額表の乙欄で源泉徴収され(令和8年分以降は社会保険料等控除後の月額105,000円未満なら3.063%)、正しい税額は確定申告で精算する(国税庁No.2520)
- 給与所得控除は2か所の支払金額を合計して1回だけ適用される(国税庁No.1410)。さらに住民税は本人の希望で普通徴収を選べないため、副業分も本業の給与から天引きされる(東京都主税局)
- 結論:副業がアルバイトなら「収入20万円超」で確定申告
- 主たる給与と従たる給与——甲欄と乙欄で天引き額が変わる
- 年末調整は1か所だけ。だから自分で精算する
- 「アルバイト100万円までは非課税」が副業では成り立たない理由
- モデルケース:本業450万円+副業アルバイト100万円
- 住民税は「自分で納付」を選べない
- 確定申告のときに用意するもの・つまずきやすい点
- まとめ
結論:副業がアルバイトなら「収入20万円超」で確定申告
先に結論を書きます。副業がアルバイト・パートなど給与で支払われている場合、確定申告が必要かどうかは源泉徴収される前の収入金額(総支給額)で判定します。国税庁タックスアンサーNo.1900は、確定申告が必要な給与所得者として「給与を2か所以上から受けていて、かつ、給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、年末調整されなかった給与の収入金額と、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)との合計額が20万円を超える人」を挙げています。
ここが業務委託の副業との決定的な違いです。業務委託やネット収入は雑所得なので「収入−必要経費=所得」が20万円かどうかで判定しますが、給与には必要経費を差し引く仕組みがないため、もらった金額そのままで判定されます。時給1,200円で月14時間ほど働けば年20万円を超えます。
| 副業の形態 | 20万円の判定基準 | 経費・控除の差引き |
|---|---|---|
| アルバイト・パート(給与) | 収入金額(総支給額) | 差し引かない |
| 業務委託・ネット収入(雑所得) | 所得金額(収入−必要経費) | 必要経費を差し引く |
なお、No.1900には申告が不要になる例外の注記もあります。給与所得の収入金額から、雑損控除・医療費控除・寄附金控除・基礎控除以外の各所得控除の合計額を差し引いた金額が150万円以下で、かつ各種の所得金額(給与所得・退職所得を除く)の合計額が20万円以下の人は、申告の必要がないとされています。本業の給与がそれなりにある会社員には基本的に当てはまらない例外ですが、本業も短時間勤務で年収が低い場合には該当することがあります。
主たる給与と従たる給与——甲欄と乙欄で天引き額が変わる
結論として、2か所から給与をもらうと、片方は主たる給与、もう片方は従たる給与として扱われ、毎月の源泉徴収の計算方法が変わります。国税庁タックスアンサーNo.2520によると、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出した勤務先の給与が主たる給与、それ以外の勤務先の給与が従たる給与です。この申告書は同時に2か所以上へ提出することができないため、通常は本業が主たる給与になります。
そして「主たる給与を支払う場合の源泉徴収税額は、税額表の『甲欄』で求めます」「従たる給与を支払う場合の源泉徴収税額は、税額表の『乙欄』で求めます」とされています。乙欄は各種控除を織り込まない高めの区分です。国税庁が公表している令和8年分以降の乙欄の計算方法は次のとおりです。
| その月の社会保険料等控除後の給与等の金額 | 源泉徴収税額 |
|---|---|
| 105,000円未満 | その金額の3.063% |
| 105,000円以上740,000円以下 | 税額表(月額表・乙欄)による |
| 740,001円以上1,710,000円未満 | 259,200円+740,000円超の部分の40.84% |
| 1,710,000円以上 | 655,400円+1,710,000円超の部分の45.945% |
出典:国税庁「月額表の乙欄を適用する給与等に対する税額の電算機計算について(令和8年分以降)」。3.063%が適用される上限は令和8年分から105,000円に引き上げられています(令和7年分以前は別の金額でした)。副業アルバイトの月収がこの範囲であれば、天引きされるのは3.063%だけ、ということになります。
年末調整は1か所だけ。だから自分で精算する
結論として、副業先で年末調整をしてもらうことはできません。国税庁タックスアンサーNo.2520は「原則として従たる給与については年末調整できませんので、所得者本人が確定申告することにより所得税および復興特別所得税の精算を行う必要があります」と明記しています。
年末調整は、その勤務先が支払った給与だけを対象に、扶養控除や生命保険料控除などを反映して1年分の税額を確定させる手続きです。副業先の給与は本業の年末調整に含められないため、2か所を合算した正しい税額は誰も計算してくれません。これを自分で確定させるのが確定申告です。
- 本業——扶養控除等申告書を提出し、甲欄で源泉徴収され、年末調整で本業分だけが精算される
- 副業(アルバイト)——乙欄で源泉徴収され、年末調整は行われない。源泉徴収票が交付される
- 自分——2枚(以上)の源泉徴収票を合算して確定申告し、不足分を納付(または過払い分の還付を受ける)
令和8年分(2026年分)の所得についての確定申告期間は、原則として2027年2月16日(火)から3月15日(月)までです。申告の手順は副業の確定申告のやり方|スマホ・e-Taxで完結する5ステップで解説しています。
「アルバイト100万円までは非課税」が副業では成り立たない理由
結論として、給与所得控除は勤務先ごとに使えるものではなく、2か所の支払金額を合計して1回だけ適用されます。国税庁タックスアンサーNo.1410は給与所得控除額の速算表を示したうえで、「同一年分の給与所得の源泉徴収票が2枚以上ある場合には、それらの支払金額の合計額により上記の表を適用してください」としています。
| 給与等の収入金額(2か所以上なら合計額) | 給与所得控除額 |
|---|---|
| 1,900,000円まで | 650,000円 |
| 1,900,001円〜3,600,000円 | 収入金額×30%+80,000円 |
| 3,600,001円〜6,600,000円 | 収入金額×20%+440,000円 |
| 6,600,001円〜8,500,000円 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
| 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) |
出典:国税庁タックスアンサーNo.1410「給与所得控除」(令和7年分以降)。この表を見ると、「アルバイト年収100万円なら給与所得控除と基礎控除で税金はかからない」という一般によく言われる話が、副業では成り立たないことがわかります。最低保障額(令和8年度税制改正後は74万円)が使えるのは合計収入が220万円までの人だけで、本業の給与が450万円ある人はすでに控除枠の上のほうを使っているためです。
さらに所得税の基礎控除は合計所得金額に応じて段階的に決まるため、区分をまたぐと基礎控除自体が減る点にも注意が必要です。令和8年度税制改正(令和8年12月1日施行)により、令和8年分以後の基礎控除は引き上げられました。国税庁「令和8年4月 源泉所得税の改正のあらまし」によると、令和8年分・令和9年分の基礎控除は合計所得金額489万円以下で104万円、489万円超655万円以下で67万円、655万円超2,350万円以下で62万円です(2,350万円超は改正なし)。
モデルケース:本業450万円+副業アルバイト100万円
本業の給与収入450万円の会社員が、副業のアルバイトで年100万円(月約8.3万円)を受け取った場合の税負担の増加を、令和8年分の制度で簡略に試算します。社会保険料は本業分65万円のみ(副業先では社会保険に加入しない前提)、扶養親族なし、その他の控除は考慮しません。
| 項目 | 本業のみ | 本業+副業アルバイト100万円 |
|---|---|---|
| 給与収入の合計 | 4,500,000円 | 5,500,000円 |
| 給与所得控除 | 1,340,000円 | 1,540,000円(+20万円のみ) |
| 給与所得(=合計所得金額) | 3,160,000円 | 3,960,000円 |
| 基礎控除(所得税・令和8年分) | 1,040,000円 (489万円以下の区分) | 1,040,000円 (489万円以下のまま) |
| 社会保険料控除 | 650,000円 | 650,000円 |
| 課税所得(所得税) | 1,470,000円 | 2,270,000円(+80万円) |
| 所得税+復興特別所得税 | 75,000円 | 132,200円(+57,200円) |
| 住民税・所得割(10%) | — | +約80,000円 |
| 税負担の増加(合計) | — | 約137,200円 |
副業収入100万円に対して、増える税金は約13.7万円(実質約13.7%)です。ポイントは、副業収入は100万円増えたのに課税所得は80万円しか増えていないこと。給与所得控除が20万円分だけ増えたおかげです。この例は令和8年度税制改正の恩恵を受けています——改正前の基礎控除だと合計所得が336万円から396万円に上がる過程で控除が88万円から68万円に下がり、課税所得は100万円増えて税負担は約16.6万円になっていました。改正後は489万円以下が一律104万円になったため、この段差を踏まずに済んでいます。
一方、副業先で毎月天引きされているのは乙欄の3.063%だけです。月8.3万円なら年間で約3万600円にとどまるため、確定申告では所得税の不足分として約2.7万円を納付することになります。住民税の約8万円は、翌年度に本業の給与から天引きされる形で負担します。
住民税は「自分で納付」を選べない
結論として、副業がアルバイト(給与)の場合、住民税を「自分で納付(普通徴収)」に切り替えることはできません。確定申告書第二表の住民税に関する欄は「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」を選ぶものなので、給与である副業の分は最初から対象外です。
東京都主税局の説明では、「地方税法では、所得税を源泉徴収している事業主については、従業員の個人住民税を特別徴収しなければならないことになっています」とされ、さらに「給与所得者の個人住民税は原則として特別徴収の方法により徴収しなければなりません。したがって、従業員の希望により普通徴収を選択することはできません」と明記されています。「アルバイトやパートであってもこの要件に当てはまる場合には、特別徴収の対象となります」ともあります。
そして2か所以上から給与を受けている場合は、「原則として、主たる給与の支払を受けている勤務先で特別徴収を行います」とされています。つまり、副業アルバイト分を含んだ住民税が、本業の給与から天引きされることになります。
確定申告のときに用意するもの・つまずきやすい点
結論として、必要なのはすべての勤務先の源泉徴収票です。給与の支払者には源泉徴収票の交付義務があるため、副業先からも受け取れます。年の途中で辞めた短期のアルバイトも対象です。
- 本業の源泉徴収票——年末調整済み。「給与所得控除後の金額」「所得控除の額の合計額」欄に数字が入っています
- 副業先の源泉徴収票——年末調整されていないため、「支払金額」と「源泉徴収税額」だけが記載されているのが通常です
- 控除証明書など——本業の年末調整で出し忘れた生命保険料控除証明書やiDeCoの証明書があれば、確定申告で反映できます
- マイナンバーカードとスマホ——e-Taxのマイナンバーカード方式で提出できます。ID・パスワード方式は令和7年10月1日から新規発行が停止されています
つまずきやすいのは次の3点です。
- 源泉徴収票を「1枚だけ」入力してしまう——確定申告書等作成コーナーでは源泉徴収票を複数枚入力できます。副業先の分を入れ忘れると所得の申告漏れになります
- 20万円以下だから何もしなくてよいと考える——所得税の確定申告が不要でも、住民税には20万円ルールに相当する省略規定がないため、市区町村への住民税申告が必要です(副業の住民税申告のやり方)
- 医療費控除やふるさと納税で申告する年に忘れる——確定申告をするなら、20万円以下の副業の給与も含めて申告する必要があります
なお、申告しないまま放置した場合には無申告加算税と延滞税が加算されます。給与は勤務先から市区町村へ給与支払報告書が提出されるため、副業アルバイトは特に発覚しやすい形態です(副業を申告しないとどうなる)。
まとめ
- 副業がアルバイト(給与)なら、20万円の判定は経費も控除も引かない「収入金額」ベース(国税庁No.1900)
- 扶養控除等申告書を出した本業が主たる給与=甲欄、副業は従たる給与=乙欄。令和8年分以降は社会保険料等控除後の月額105,000円未満なら3.063%
- 年末調整は本業1か所のみ。従たる給与は年末調整できないため、確定申告で精算する(国税庁No.2520)
- 給与所得控除は2か所の支払金額を合計して1回だけ適用(No.1410)。「アルバイト100万円まで非課税」は副業では成り立たない
- 住民税は本人の希望で普通徴収を選べず、主たる給与の勤務先で合算して特別徴収される(東京都主税局)
- 本業450万円+副業100万円のモデルケースでは、税負担の増加は約16.6万円(うち住民税約8万円)